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富田 涼平; 富田 純平; 鈴木 大輔; 安田 健一郎; 宮本 ユタカ
放射化学, (48), p.1 - 15, 2023/09
二次イオン質量分析法は酸素などのイオンビームを試料に照射することで試料の構成元素から放出されたイオンを質量分析する手法である。この手法は僅かなイオンであっても高感度の計測が可能であり、極微量の元素の同位体比分析に広く用いられる。我々は高分解能を有する二次イオン質量分析装置を用いて、ウランを主とした核物質を含む微小粒子の同位体組成分析技術を開発するとともに、IAEAが原子力施設等の立ち入り査察で採取した試料に含まれるウラン粒子の同位体組成を日本のIAEAネットワーク分析所として分析し、その結果を報告している。本稿では、二次イオン質量分析法の解説と従来型の二次イオン質量分析装置から始まり、現在、主流となっている大型二次イオン質量分析装置が開発されるまでの二次イオン質量分析法を使用した保障措置環境試料中のウラン粒子に対する分析技術の発展について、我々が行った分析技術開発の成果を中心に述べる。
株本 裕史; 中川 創平; 松田 誠
JAEA-Conf 2022-002, 146 Pages, 2023/03
第34回「タンデム加速器及びその周辺技術の研究会」は、令和4(2022)年7月21日(木)22日(金)の2日間に亘り日本原子力研究開発機構原子力科学研究所により開催された。新型コロナウイルスの感染拡大防止の対応からオンライン形式とした。本研究会は、タンデム加速器を中心とした静電加速器施設を運営あるいは利用する研究者・技術者の現場レベルからの話題提供を通じて、参加者相互の情報交換を図り、関連研究の発展や施設管理に資することを目的として行われている。本研究会へは26の大学、研究機関および産業界から約100名の関係者が参加した。発表件数は25件で、各施設の現状報告や加速器の技術開発、応用研究等について報告が行われた。また、今回はオンライン開催のためにポスター発表は行わず、口頭発表のみとした。本報告集は、これらの発表内容をまとめたものである。
浅井 志保; 半澤 有希子; 今田 未来; 鈴木 大輔; 間柄 正明; 木村 貴海; 石原 量*; 斎藤 恭一*; 山田 伸介*; 廣田 英幸*
Talanta, 185, p.98 - 105, 2018/08
被引用回数:8 パーセンタイル:31.52(Chemistry, Analytical)放射性廃棄物処分場における長寿命核分裂生成物(LLFP)の被ばくリスクを評価するためには、LLFPの分析が不可欠である。本研究では、マイクロ陰イオン交換カートリッジ(TEDAカートリッジ)を用い使用済燃料溶解液からZrを分離してLLFPの一つであるZrの存在量をICP-MSで定量した。TEDAカートリッジは、同等の分離に必要な従来分離材料(陰イオン交換樹脂)の1/10以下の体積(0.08cm)であっても優れたZr分離性能を維持し、使用済燃料中のほぼ全ての共存元素を迅速に除去できることを確認した。また、従来材料の約10倍の流速で処理が可能であるため、1.2分で分離が完了した。得られたZr定量値は、実測値による検証実績がなかった燃焼計算コードORIGEN2の正しさを実証する結果となり、ORIGEN2の信頼性も確認できた。
中島 邦久; 高井 俊秀; 古川 智弘; 逢坂 正彦
Journal of Nuclear Materials, 491, p.183 - 189, 2017/08
被引用回数:8 パーセンタイル:60.93(Materials Science, Multidisciplinary)軽水炉のシビアアクシデント時、ボロンの影響を考慮した熱力学平衡計算によれば、燃料から放出されるCsの気相中での主な化学形の一つとして、CsBO(g)が生成すると予想されている。しかし、核燃料や核分裂生成物などの熱力学データを収めた編纂物によれば、これまで報告されているCsBOの蒸気圧データの不確かさのために、この解析に使用されたCsBO(g)の熱力学データの信頼性は乏しいと評価されている。そのため、信頼性の高いCsBO(g)の熱力学データを得ることを目的に、高温質量分析法によるCsBOの平衡蒸気圧測定を試みた。その結果、CsBOの平衡蒸気圧測定データを用いて、第二法則,第三法則処理により評価した気体CsBOの標準生成エンタルピーH(CsBO,g)は、それぞれ、-700.710.7kJ/mol, -697.010.6kJ/molとなり、過去に報告されている蒸気圧データを用いて得られた第二法則,第三法則処理によるH(CsBO,g)の差異よりも小さくなったことから、これまでよりも信頼性の高い熱力学データを取得できたことが分かった。さらに、既存のH(CsBO,g)についても、本研究で得られたH(CsBO,g)の値と誤差の範囲で一致したことから、信頼性が高いことが分かった。
今田 未来; 浅井 志保; 半澤 有希子; 間柄 正明
JAEA-Technology 2015-054, 22 Pages, 2016/03
ICP-MSを用いた同位体希釈質量分析法(IDMS)により、使用済燃料や高レベル放射性廃棄物中に存在する長寿命核種Zr-93を定量するためのスパイクとする標準液を、Zr-91濃縮安定同位体標準(以下、Zr-91標準)を金属の状態で入手し溶解して調製することとした。Zr-91標準を溶解する前に、模擬金属Zr試料を用いて溶解条件を検討した。最適な条件であった3v/v% HF-1 M HNO混合溶媒0.2mLによってZr-91標準2mgを溶解し、1M HNOを用いて希釈して濃度を約1000g/gとした。市販のZr元素標準液をスパイクとして、ICP-MSを用いたIDMSによりZr-91標準溶解液の濃度を(9.61.0)10g/gと決定した。定量結果が予測したZr濃度と一致したことから、Zr-91標準溶解液は化学的に安定な状態で存在していること、及びZr-91標準溶解液中の不純物測定結果から不純物の有意な混入がないことを確認した。これらの結果から、調製したZr-91標準溶解液は、Zr-93分析用の濃縮安定同位体標準液として十分な品質を有していることが示された。
鈴木 崇史; 伴場 滋*; 北村 敏勝; 甲 昭二*; 磯貝 啓介*; 天野 光
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 259(1), p.370 - 373, 2007/06
被引用回数:14 パーセンタイル:68.25(Instruments & Instrumentation)大型再処理工場が稼動するとIが環境中に放出される可能性があり、環境影響評価のためには精度の良い測定が重要である。そこで環境試料中のIを加速器質量分析法(AMS)と従来法である放射化分析法(NAA)の両方で測定し相互比較を行った。環境試料は北海道,岩手,秋田,兵庫,大分の5地点で土壌,海藻,原乳を採取した。土壌は表層(05cm)と深層(5-20cm)に分けた。土壌と海藻は燃焼法と陰イオン交換樹脂ディスクを用いて抽出した。原乳は陰イオン交換樹脂ディスクを用いると目詰まりを起こすため、陰イオン交換樹脂によるバッチ法とその溶媒抽出法の組合せで抽出した。抽出した溶液はAMSとNAA用にそれぞれAgIとPdIの化学形で沈殿させた。NAAによる測定結果はほとんど検出限界以下であったが、幾つかの土壌サンプルでIを検出できた。例えば、北海道の表層土壌ではAMSとNAAの測定結果はヨウ素同位体比(I/I)でそれぞれ(2.40.04)10, (2.40.26)10であった。これら原理の異なる方法での測定結果はよく一致しており、両測定方法は環境試料中のIを測定するのに有効な分析方法であることがわかった。またAMSは測定時間,感度,利便性の点で優れている。
山本 博之; 斉藤 健; 朝岡 秀人
Journal of Trace and Microprobe Techniques, 19(4), p.571 - 579, 2001/11
被引用回数:4 パーセンタイル:14.99(Chemistry, Analytical)二次イオン質量分析法(SIMS)においてはO,Ar等の一次イオンが励起源として用いられることが多い。本研究においては比較的大型の分子イオンであるSF照射によって顕著に二次イオン放出が促進される結果を報告した。一般的に一次イオンの電流密度が非常に高い(1mA/cm程度以上)場合、スパッタ効率が非線形に増加することが良く知られている。これに対し本研究では、分子イオンを用いることにより1A/cm程度の低電流密度においてもイオンの放出が顕著となることを見いだした。SFをBeに照射した場合、得られるBeの二次イオン強度はAr照射の7~8倍、Xe照射の2倍程度であった。なお、分子イオン照射の特徴として、クラスターイオン(Be)の放出量が非常に多くなることも明らかとなった。Beを例にとると、SF照射により得られるクラスターはArの200倍以上となる。これらの結果は分子イオンの衝突により、原子イオンよりも広い励起領域が表面に生成したためと考えられる。
山本 博之; 斉藤 健; 朝岡 秀人
Applied Surface Science, 178(1-4), p.127 - 133, 2001/07
被引用回数:5 パーセンタイル:32.75(Chemistry, Physical)分子イオンを固体表面に照射した場合、原子イオンに比べてはるかに低い照射密度において顕著なクラスター放出がみられる。本研究においては、種々のイオンをSi表面に照射し、放出された粒子の質量を分析することにより照射イオン種とクラスター生成効率との関係について検討した。この結果、分子イオンを一定速度で照射した場合、SFはSFに比べて最大100倍程度のクラスター強度となるのに対し、原子イオンでこれらと同程度の質量であるXeとArの場合はクラスター強度の差はこれほど顕著とはならなかった。これはクラスター生成において照射イオンの質量よりもその径が大きく影響するためと考えられる。
江坂 文孝; Zheng, W.*; 渡部 和男; 間柄 正明; 半澤 有希子; 臼田 重和; 安達 武雄
Advances in Mass Spectrometry, 15, p.973 - 974, 2001/00
環境試料中の鉛含有粒子の鉛同位体比分析は、一般に誘導結合プラズマ質量分析法で行われている。しかしこの方法では試料を分解する必要があるため個々の粒子の分析は不可能である。本研究では、二次イオン質量分析法により個々の粒子の鉛同位体比を測定する方法について検討し、実際のエアーサンプリングにより採取した試料の分析に適用を試みた。屋内で採取した試料中の鉛同位体比は、Pb/Pb=0.859,Pb/Pb=2.087であり、自動車排出標準粒子のそれとほぼ同様の値であった。このように二次イオン質量分析法を用いることにより、試料の前処理なしに個々の粒子の同位体比を測定できることが示された。
山崎 慎一*
JNC TJ8430 2000-005, 159 Pages, 2000/03
日本の各地100箇所余りから採取した500点以上の土壌の微量及び超微量元素の分析を主としてICP-質量分析法を用いて行った。土壌の採取地点はわが国に見られる主要な土壌を網羅するように設定された。従来の分析法によって求めた多量元素のデータを加えることによって、日本の土壌の60種類以上の元素のバックグラウンド値(天然存在量)を明らかにすることができた。得られた結果の概略は以下の通りである。1)各元素の濃度範囲は極めて広く、多くの元素で3桁以上の幅を示した。この様な幅広い濃度範囲を持つにも係わらず、以下の一般的な傾向が認められた。第一遷移元素の濃度は高く、原子番号が小さく、あるいは大きくなるに従ってその値は低下した。しかし、鉛、トリウムおよびウランは例外的に高い値となった。原子番号が偶数の元素は一般にその両側にある奇数番号の元素よりも濃度が高かった。2)頻度分布はほとんどの元素で低いほうへ強い片寄りを示し、算術平均値はバックグラウンド値として適切でないことが明らかであった。3)周期律表上で同一族、あるいは亜族に属する元素間ではかなりの組み合わせで高い相関(r0.9)が認められた。4)クラスター分析で元素のグループ分けを行ったところ、土壌中での各元素の分布は土壌の性質よりも元素の物理化学的性質によって強く支配されていることが判明した。5)地球化学的標準物質として用いられている火山岩の推奨値を用いてクラスター分析で得られた樹形図は土壌のそれに酷似していた。この結果より、土壌中の各種元素の全含量はその出発物質である母岩の影響を未だに色濃く受けていると結論された。土壌生成過程の影響を検討するには、より溶解性の高い画分をも対象にデータの蓄積を行うことが必要と考えられた。
加藤 金治; 伊藤 光雄; 渡部 和男
Fresenius Journal of Analytical Chemistry, 366(1), p.55 - 58, 2000/01
原子炉の解体に伴って大量に発生する放射線遮蔽コンクリートを合理的かつ安全に処分するためには、その廃棄物の放射能インベントリーを正確に評価することが重要である。放射能インベントリー評価法開発の一環として、ここでは、Sr-90の極微量放射能量評価のため、その親元素であるTh及びUの高感度定量法を確立した。確立した定量法は、試料を酸分解し、陰イオン交換分離後、誘導結合プラズマ-質量分析(ICP-MS)する方法である。本法におけるTh及びUの検出限界(3,n=10)は、それぞれ2.26及び1.77pptであり、放射化コンクリート実試料中の5ppm程度のTh及び1ppm程度のU定量の繰り返し再現精度は共に変動係数7%以下であった。
原田 克也; 三田 尚亮; 西野 泰治; 天野 英俊
JAERI-Conf 99-009, p.103 - 111, 1999/09
軽水炉技術の高度化に伴い、発電炉燃料の高燃焼度化が進められている。燃料の高燃焼度化によって生じるFPガス放出挙動、ペレットスエリング、PCI、酸化膜生成挙動、水素化物の偏析、リム効果のような特異的な照射挙動を詳細に把握するための照射後試験は非常に重要なものとなっている。このような背景のもと、燃料試験施設では、高燃焼度燃料の健全性・安全性を確証するための照射後試験データを得ることを目的とする試験装置の開発を行っている。本セミナーでは、これまでに開発した照射後試験装置のうち、イオンマイクロアナライザ、ペレット熱容量測定装置、精密密度測定装置及び高分解能走査型電子顕微鏡について報告する。
早川 滋雄*; 高橋 光人*; 荒川 和夫; 森下 憲雄
Journal of Chemical Physics, 110(6-8), p.2745 - 2748, 1999/02
被引用回数:21 パーセンタイル:55.26(Chemistry, Physical)MS/MS装置を使って、W(CO)(n=4~6)の電荷逆転スペクトルとCIDスペクトルを測定した。CIDスペクトルでは非解離のピークが最も強く、主なピークはいくつかのCOを脱離した正イオンによる。CO脱離の数が大きくなるにつれて、ピーク強度は小さくなった。電荷逆転スペクトルでは非解離のピークは検出されず、主要なピークは、どのような入射イオンに関しても親イオンから2つのCOを失った負イオンであった。これらのスペクトルから内部のエネルギー分布を熱化学定数を用いて見積もった。電荷逆転質量分析法において得られた内部のエネルギー分布は、入射イオンのエネルギーレベルから約4eV低い位置に集中していた。この4eVのエネルギーはCsのイオン化エネルギー3.89eVと一致し、電荷逆転質量分析法では近共鳴の電子移動で生成した励起中性種から解離が起こるのを証明した。
山本 博之; 馬場 祐治
Applied Physics Letters, 72(19), p.2406 - 2408, 1998/05
被引用回数:9 パーセンタイル:42.99(Physics, Applied)数mA/cm以上の高電流密度のイオンが表面に衝突した場合、励起された原子の一部が2~3個以上の原子からなるクラスターとして表面を離脱する。本研究では、SF等の分子イオン(4keV)を用い、1A/cm程度の電流密度においてSi~Siまでのクラスターを得た。これは、SFが6原子で構成されることから、単原子イオン照射の場合と異なり、分子イオンの径に応じて局所的に極めて高密度の励起領域が表面に形成されるためと考えられる。また、各種分子イオン、単原子イオンの照射結果から、分子イオンの径とクラスター強度に相関のあることを明らかにした。さらに、得られたクラスターイオンの運動エネルギー分布から、Si原子はいったん個々の単原子として表面を離脱した後、これらの再結合によりクラスターとなる可能性を示唆した。
早川 滋雄*; 遠藤 博久*; 荒川 和夫; 森下 憲雄
Int. J. Mass Spectrom. Ion Process, 171(1-3), p.209 - 214, 1997/00
アルカリ金属ターゲットを用いた電荷逆転質量分析法により、CH異性体の中性ラジカルへの解離機構を研究した。電子励起したアレンとプロピンはそれぞれ相当する正イオンからアルカリ金属との中性化により得られる。その励起分子の解離によって生成する中性フラグメントは、再度の電子移動により負イオンとして質量分析される。電荷逆転スペクトルでのピーク強度とピーク中の比較から、電子励起したCHの解離機構を検討した。その結果2つの水素原子の脱離は、2つの独立なC-H結合解離においては結合エネルギーが小さいほど、その結合が解離し易い。C-C結合の解離は水素原子の脱離に比べて実質的にかなり小さい。このことはC-C結合の振動数がC-H結合の振動数に比べて低いためであると推測される。
関口 哲弘; 関口 広美*; 小尾 欣一*; 田中 健一郎*
J. Phys., IV, 7, p.505 - 506, 1997/00
ギ酸メチル吸着系の炭素(C)および酸素(O)K殻励起により起こる光刺激イオン脱離反応をパルス放射光を利用した飛行時間質量分析(TOF)法により調べた。CおよびO 1s内殻電子励起によりH,D,CH,O,OCH(n=0~3)などの脱離イオン種がTOFスペクトル上で帰属された。また、これらのイオン収量の励起波長依存性を定量的に測定した結果、いくつかの共鳴内殻励起で励起状態における電子構造を顕著に反映して脱離収量が増加することがわかった。脱離機構を更に調べるため、脱離イオン同士での光イオン-光イオン-コインシデンス(PIPICO)実験を試みた。その結果(H-CH),n=0~2コインシデンス・ピークが観測され、またCHイオン収量の励起スペクトルと一致した。このことから、脱離イオン収量の共鳴励起増強効果のモデルとして表面上での多価イオン生成が関与していることが示された。
関口 広美*; 関口 哲弘
Surface Science, 390(1-3), p.214 - 218, 1997/00
被引用回数:9 パーセンタイル:53.06(Chemistry, Physical)我々は炭素原子一つを持つギ酸吸着系(DCOO/Si)において、炭素K殻から3種類の異なる空軌道への遷移の結果、分子軌道が関与した結合が切断されて生じる脱離フラグメントの収量が増加することを既に報告した。本研究においては高分解能軟X線分光器を用いることにより酸素内殻励起領域においてDCOO吸着種の二種類の酸素を選択的に内殻励起し、それぞれの励起で起こる脱離反応収量の違いを調べた。ヒドロキシ酸素(-O-)の励起によりCDOイオン収量が増加し、カルボニル酸素(C=O)の励起ではCD収量が増加した。このことから非局在効果が大きいと考えられる電子をもつ有機分子吸着系においても選択励起された原子の近傍で優先的に結合切断及び脱離が起こることが明らかにされた。また、基板との相互作用が弱いカルボニル酸素励起の方がO+脱離が顕著であり、相互作用が強いヒドロキシ酸素の励起では脱離が顕著でないといった表面特有効果が見い出された。
関口 哲弘; 関口 広美*
Atomic Collision Research in Japan, 0(22), p.89 - 90, 1996/00
ギ酸メチル分子のいくつかの内殻励起状態における波動関数が各官能基や結合に局在しているという研究背景を元に、高エネルギー分解能の軟X線分光器により内殻励起状態を選択励起することにより「結合を選択した光化学反応」の可能性を検討した。実験手法としてはパルス放射光を用い、同位体置換ギ酸メチルの吸着系から脱離するイオン種を飛行時間質量分析法により観測した。各イオン収量の励起スペクトルは吸収スペクトルとかなり異なり、イオン脱離確率が初期内殻励起にかなり依存していることが見出された。特にDとCHイオン脱離確率が大きく増加した励起はC 1s(CH)(O-CH)とC 1s(C=O)(C-D)といった反結合性軌道への電子遷移による結果であると解釈された。この結果は励起エネルギーを変化させることにより分子内の反応部位(サイト)を任意に選択することができる可能性があることを示したものである。
not registered
PNC TJ1545 95-001, 150 Pages, 1995/03
本報告では、核燃料サイクルに関連した長半減期放射性核種の分析定量法の調査研究の最終年度に当り、一昨年および昨年度の成果を踏まえ、我が国でのこの方面の最先端の研究成果を中心にまとめ上げた。本委員会委員は、環境放射能分析はもとより環境放射能動態研究の第一線で活躍されている数少ない研究者であり、委員一人一人の研究の現状を知ることは大変有意義なことと考えた。そこで各委員の環境放射能研究を歴史的背景や周辺の研究状況をも勘案して報告書としてまとめることにした。質量分析を用いた環境放射能分析については総論としての纏めのほか、99Tc、237Np分析定量への実際の適用例と報告している。そのほか、食品、人体中のトリチウム分析や液体シンチレーション法とパルス時間間隔解析法を併用した放射体の分析を纏めている。更に、これら環境放射能のバックグラウンド調査結果について最後に記述した。
早川 滋雄*; 遠藤 博久*; 荒川 和夫; 森下 憲雄; 杉浦 俊男*
Int. J. Mass Spectrom. Ion Process, 151, p.89 - 95, 1995/00
電子衝撃で生成する正イオンとアルカリ金属ターゲトの衝突により,2電子移動で生成される負イオンをMS/MSにより検出する荷電逆転質量分析法を開発した。異性体であるアレンとプロピンから生成するCHイオンとCsターゲットの衝突により負イオンCHm(m=0~3)を生成する。水素原子を2個以上脱離するCHn(n=0~2)イオンは両試料ともほぼ同じ強度を示すが、プロピンで生成するCHイオンの強度はアレンを用いた場合の約2倍でかつピークの幅も広い。このピークの半値巾から計算した運動エネルギー放出は、プロピンで0.64eV、アレンで0.28eVと大きな差異を示した。これらの異性体によるイオン生成の違いは、電子移動による中性化反応過程における励起レベルの違いにより説明できる。通常の衝突誘起解離では、異性体イオンについて弁別することができないが、本方法では可能であることが明らかになった。